このページでは「糖尿病」に関する情報を紹介しています。
厚生労働省の【国民健康・栄養調査】によると、
日本には
- 糖尿病が強く疑われる方
- 糖尿病の可能性がある方
が、合わせて約2000万人もいるとされています。(2017年時点)
これは日本人口の5〜6人に1人が糖尿病であるという数字です。
糖尿病の予防と早期発見には、どんなことに気をつければいいのでしょうか。
また、糖尿病が疑われた場合はどうすればいいのでしょうか。
糖尿病について皆さまに理解を深めていただき、自分の身体と向き合うきっかけになれればと思います
二宮内科クリニックが、あなたの健康を支える存在としてお力になれたら幸いです。
目 次
糖尿病の怖さ
身体へのサイン
糖尿病の診断を受けるきっかけ
- 健康診断の結果で糖尿病の疑いがあった。
- 他の病気で血液検査した際に、糖尿病と診断を受けた。
- 検査装置が置いてある薬局等で何気なく検査を受けてみた。
など、「あなたは糖尿病です」と診断を受ける様々な「きっかけ」があります。
それを機に自分の身体と向き合い「治療しよう」と前向きな決断をできれば問題ありません。
注意が必要なのは、糖尿病予備軍の方。
「自分は大丈夫」と健康に無関心な生活を送っている方は多いのではないでしょうか?
こんな症状、ありませんか?
- 異常にのどが渇く
→ たくさん水分をとりたくなる。 - 多尿・頻尿
→ お小水の量、回数が増えた。 - 体重減少
→ 急に体重が落ちてきた。 - だるい症状が続いている。
など、これらは血糖値がかなり高くなっている方、特有の「身体のサイン」です。
以上のような症状が現れない程度の高血糖が続くことにより、糖尿病特有の合併症が起きていきます。
糖尿病によって生じる合併症
神経の障害
- 脚の知覚低下(痛む、痺れる)
- 立ちくらみ
- ED(勃起不全・勃起障害)
目の障害
- 白内障
- 網膜症
とくに糖尿病が患う網膜症(糖尿病網膜症)が悪化すると、最悪の場合、失明してしまうことがあります。
腎臓の障害
血糖値が高い状態が続くと、全身の血管は傷つきやすく、硬くなりやすい状態となります。
腎臓で血管が硬くなる(動脈硬化)と、血液を「ろ過」する役割が正常に機能しない状態となり、人工透析が余儀なくされる場合もあります。
合併症以外でもリスクが多い糖尿病
- 狭心症
- 心筋梗塞
- 脳梗塞
など、上記のような動脈硬化に関係する病気も、糖尿病のない方に比べると2~3倍程度増加する傾向にあります。
また、足の血管の閉塞(壊疽)のために足の切断を余儀なくされてしまった症例もあります。
もし適切な治療が行われなければ、糖尿病は種々の合併症をきたし、日々の生活に障害をあたえ、生命を脅かす病気なのです。
糖尿病と向き合う
糖尿病の正体
私たちが食べた糖質(米、パンなど)は胃・小腸で消化・吸収され、ブドウ糖となって血液の中へ入ります。
血液の流れにのって運ばれたブドウ糖は、細胞の中へ入り栄養となります。
ブドウ糖が細胞の中へ入る際には、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが重要な役割をはたしています。
糖尿病とは、インスリンの働きが低下することで、ブドウ糖が細胞の中に入れず、血液中に停滞する(高血糖)ことで種々の弊害を起こす病気です。
インスリンの働きが悪くなる原因
インスリンの分泌が低下する
インスリンの分泌能力は遺伝的な要素が大きいとされています。
インスリンの細胞への効きが悪くなる
- 肥満
- 食べ過ぎ
- 運動不足
など、環境的な要因が関係してインスリンの働きが悪くなる(インスリン感受性低下)ことで糖尿病を発症します。
これらを2型糖尿病といい、わが国では糖尿病の95%以上を占めています。
運動不足・食生活の欧米化が糖尿病を増加させていると考えられますが、欧米人と比べて日本人はインスリンの分泌能力が低く、このことも日本で糖尿病が増加している一因と考えられます。
同じ糖尿病でも主に小児に発症する1型糖尿病は、発症に生活習慣の乱れはまったく関係ありません。
1型糖尿病は、ウイルス感染や免疫反応により、インスリンを分泌する膵β細胞が破壊される病気です。
インスリンを分泌できない状態となるため、治療にはインスリン注射が必要となります。
糖尿病の検査
血液検査
良好な状態を維持するための指標を得るために、血液検査を行います。
血液検査では
- 血糖値
- HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
この2つの数値を測定します。
血糖値
- 朝食を食べる前の「空腹時血糖値」
→ 空腹時血糖値が130mg/dl未満 - 食事をしてから2時間後の「食後2時間血糖値」
→ 食後2時間血糖値が180mg/dl未満
いずれかの結果がでれば、良好と判定できます。
しかし、普段は高い血糖値でも、検査前2~3日の食事だけ気をつける(糖分の少ない食事をとる)と、一時的に体内の血糖値が下がってしまうことがあります。
そこで参考にするのが、HbA1cです。
HbA1c:ヘモグロビン・エーワンシー
HbA1cとは、過去1~2カ月間の血糖値の平均を反映した数値です。
血糖コントロールの正常値としては、HbA1cが6.2%(NGSP値)未満を維持している必要があります。
例え検査当日の血糖値が良好でも、血糖値の平均(HbA1c)が高ければ、良好であるとはいえません。
日々の血糖コントロールが不良だったという判断ができますので、食習慣の改善が必要です。
※ 糖尿病の方
合併症を予防あるいは悪化させないために、治療法の種類を問わず6.9%(NGSP値)以下に保つことが必要です。
尿検査
本来、血液中の糖は腎臓で血液から「ろ過」されながら、水分と一緒に体に再吸収されます。
しかし、血糖が異常に増加して(血糖値:約170mg/dl以上)腎臓での処理の限界を超えると、尿糖が検出されるのです。
定期的に尿を検査することで、血糖の状態を調べるための一つの指標になります。
糖尿病の治療
1:糖尿病の食事療法
糖尿病は日々の食生活の見直しが大切であり、食事療法は糖尿病治療のスタートラインであるといえます。
栄養バランスが整った食事を習慣化させることで、血糖値のコントロールができるようになります。
食事による血糖コントロールができないと、ほかの治療法を行っても思うような成果が期待できません。
当クリニックでは、管理栄養士が患者さまのお体に合わせた正しい食事方法を指導させていただきます。
分からないこと、不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
2型糖尿病の方
膵臓からのインスリンの分泌が低下し、細胞への効きが弱くなっている方は「2型糖尿病」と診断されます。
食事療法によって摂取するブドウ糖の量をコントロールし、膵臓にかかる負担を最小限に抑えます。
ブドウ糖の量を制限することが、膵臓の機能回復につながります。
1型糖尿病の方
1型糖尿病は膵臓のインスリンを出す細胞が壊されてしまう病気です。
インスリン補給調節をよりスムーズに行うために食事療法を実施します。
2:糖尿病の運動療法
食事療法の成果をより良くするためには、運動によるエネルギー消費が欠かせません。
運動療法のメリット
- 2型糖尿病の方
→ 運動不足を解消し、肥満・過食を抑制する。 - 1型糖尿病の方
→ 筋力アップやストレス解消につながり、心身を健全に保てる。
1型糖尿病は小児に多いため、運動は同じく健全な発達を手助けるために効果的です。
効果的な有酸素運動
- 階段の昇り降り
- 水泳
- ジョギング
- ウォーキング(散歩)
- サイクリング など
効果的なレジスタンス運動
- マシン運動
- スクワット
- ダンベル など
運動療法で大切なのは「継続」すること。
しかし、無理に身体を動かして、ケガをしてしまったら本末転倒です。
身体に支障をきたさないように注意しながら、安全・安心して継続できる運動を習慣化させましょう。
3:糖尿病の薬物療法
飲み薬による治療
もちろん、お薬を飲んでいるからといって食事療法と運動療法をやめる訳ではありません。
大切なのは食生活と運動習慣の継続であり、お薬はあくまでも補助的な役割であることを留意してください。
処方されるお薬は
- 糖尿病のタイプ
- 症状
- 血糖コントロールの状態
- 年齢(子どもの治療・高齢者の治療)
など、患者さまによって異なります。
近年では薬の種類も増え、効果的かつ低リスクの治療を提供できるようになっています。
インスリン療法
- 1型糖尿病の方
→ インスリン製剤を自己注射することで身体の外から補い、血糖コントロールをします。 - 2型糖尿病の方
→1型糖尿病が疑われる方、飲み薬だけでは成果が得られない方、妊婦さんなどにも使用されます。
これまでは「血糖コントロールが上手くいかないケースの最終手段」のようなネガティヴな印象がありました。
しかし、近年では医療の進歩によって様々な製剤の種類や治療方法が改良されています。
インスリン注射に関しても「怖い」「面倒」「難しい」といったイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか?
お薬と同様に注射器も改良されており、今では簡単に自己注射できるようになっています。
患者さまのお身体の状態やライフスタイルに適した治療を提供することができるようになりましたので、安心して前向きに治療に臨んでいただければと思います。
糖尿病の早期発見と予防
合併症を起こさないために大切な3つのポイント
ポイント1:血糖値のコントロール
ポイント2:血圧のコントロール
ポイント3:血液中のコレステロールのコントロ-ル
日々の食生活を見直し、血糖値をできるだけ正常に近づけ、その状態を保つことが大切です。
最近の血糖コントロールと合併症に関する調査では、血糖値を良好に保つことが合併症を予防し、早期であれば進行を抑えられることを証明してます。
合併症のさらに動脈硬化に関係する病気(とくに狭心症・心筋梗塞)の中で、血糖と血圧のコントロールとともに、血液中のコレステロールのコントロールの重要性も明らかになっています。
- 糖尿病を予防する。
- 糖尿病を早期に発見する。
- 糖尿病と診断されたら、治療する。(血糖コントロールをする)
以上を実現するためには、まずこの病気をよく理解することが大切です。
糖尿病を知り、食事療法や運動療法の必要性を理解し、初めてこれらの治療の継続が可能となるのです。
注意点
下記に該当する方は、年1回の精密検査が必要です。
- 空腹時血糖やヘモグロビンA1cが高い方
- 40歳以上で糖尿病の家族歴がある方
- 現在または過去に肥満(標準体重+20%以上)のある方
- 高血圧・高脂血症・高尿酸血症・脂肪肝のある方
- 過去に糖尿病境界型であった方
- 妊娠糖尿病の既往または4kg以上の児を出産したことのある方
糖尿病予防につながる生活習慣
日々の食習慣・運動習慣
また普段の生活の中で、身体を動かす習慣を身に付けるのも重要です。
1日8,000歩以上歩くことを心がけましょう。
食事や運動を意識しながら、標準体重=【身長(m)×身長(m)×22】を維持することが大切です。
患者さまへのメッセージ
以前は糖尿病が原因となり網膜症を患い、失明してしまう症例も少なくありませんでした。
現代では医療の進歩によって、失明を免れるケースも増えています。
しかしながら、2017年末に発表された統計調査(※)では、
- 国内の透析人口:33万4,505人
- 前年(2016年)との比較:4,896人増加
という結果が出ています。
決して、油断できる数字ではありません。
日々の生活の中で、自分の身体と向き合う時間を作る。
正しい習慣を身に付け、健康的な身体を維持する。
たとえ医療が進歩しようとも、健康になるための原理原則が変わることはありません。
- 健康診断で引っかかってしまった方
- 検査や治療に一歩、踏み込めない方
- 今、健康に不安を抱える方
お身体に不安を抱える方は、まずは当院にご相談ください。
※ 日本透析医学会が実施した調査「わが国の慢性透析療法の現況」